〜ご挨拶〜
 私の俳歴は八年になります。俳句を嗜んでいる人は20年、30年と続けている人が多く、私はまだまだ新人です。現在は楠本憲吉師が創刊された俳誌「野の会」の同人として勉強中です。
 昨年(平成19年)手造句集「白神」を住職・日孝上人に贈呈しました。このことで、思いがけず菩提寺のホームページに「俳句の掲載」のお話しとなり、浅才を省みずお引き受けした次第です。
 月毎に掲載します俳句は、なるべく秋田に関係のある句を選んでみようと思っております。何卒宜しくお願い致します。
平成21年 1月吉日 土屋 博



【句集 白神】

   
  第一節 薫 風 / 第二節 霊南坂 / 第三節 北緯四十度 / 第四節 月見草 

  第五節 新蕎麦 / 第六節 アビニオンの橋 / 第七節 加齢

  (句集 あとがき)

 友人に勧められて、まだ早いと思っていたのに句集を作ることになりました。今回のものは、本格的句集の前段の手造り句集です。

 もともと、理科系の私は、文学的な素養はなく、文章つくりは最も不得意としていました。第二の職場の終わる頃に、友人から誘われたのが俳句を始めたきっかけです。

 俳句をやってみる気持ちになったもう一つには、小学校時代の思い出にあります。
 それは、小学校五年の頃、終戦後のことで、教科書は十分でなく、国語の時間には度々先生が俳句を皆に作らせ短冊に書かせたことです。この俳句授業が、尊敬する先生の記憶と共に、忘れられない思い出になっていました。

 俳句を始めて七年になりますが、遅々として上達しません。それでも時たま、自分でも満足の行く句が詠めたときには、俳句を続けていて良かったと思います。また、俳句を始めてから、歳時記や辞書をめくり、花草木、鳥などの自然にも気をつけるようになりました。

 今は好きな各種スポーツや音楽鑑賞の合間に、脳のトレーニングを兼ねて俳句を趣味の一つに加え、日々の記録としても続けて行きたいと思っています。
 俳句の初めから今日まで、懇切丁寧なご指導をいただいております「山中正己」氏に御礼を申し上げます。
                                     2007年8月    土屋 博

平成21年 掲載 自選句

 1月 過去帳をゆるりとひらく年初め
 2月 寒牡丹亡き母まねく日蓮展
 3月 花便りあれば帰心の捨てがたく
 4月 菜の花や北緯四十度の岬
 5月 玫瑰や白神の山隠れなし
 6月 全方位ホルン響かせ山開き
 7月 巨大なるホルンの吼える夏のダム
 8月 墓参りまだ手付かずの母の衣(きぬ)
 9月 紅玉や昔青函連絡船
10月 本陣の構えを残す紅葉宿(もみじやど)
11月 冬晴れやお岩木山の大写し
12月 極月や絵馬ずっしりと重なりぬ


平成22年 掲載 自選句

 1月 薦被り勢揃いする初詣
 2月 地吹雪や西の海岸消えている
 3月 鉄琴を叩きたくなる軒氷柱
 4月 命ありてとりわけ花の美しき
 5月 青田風ひたすら動く油田の井
 6月 変色のスクラップブックひばりの忌   
 7月 白雨来るピサの斜塔を手でささえ
 8月 八月の黙祷カザルスの鳥の歌
 9月 マザーツリー探して秋の白神山
10月 三十人三十一脚天高し
11月 秋うらら塩屋岬で俺おまえ
12月 きりたんぽとうに忘れし国訛


平成23年 掲載 自選句

 1月 初富士に大きな心貰いけり
 2月 語るのも語らぬもよし掘り炬燵
 3月 何もないことの幸せ春の雪
 4月 父母と神代桜杖をつき
 5月 バス降りる娘の「ありがとう」里の春
 6月 たらの芽や北の便りの添えられて
 7月 雲海へ足踏みだしている寝覚め
 8月 跡継ぎの小さき手に触る夏座敷
 9月 八幡平山頂湿原草紅葉
10月 津波受けし貞山堀の月荒(すさ)む
11月 母の忌の大輪の菊居間にあり
12月 タワーからわずかに議事堂冬の空


平成24年 掲載 自選句

 1月 鴨鍋や胡座同士の無礼講
 2月 新酒酌む父のモノクロ写真帳
 3月 春を待つ児の新しき三輪車
 4月 桜散る名画座のある裏通り
 5月 黄砂浴ぶ玉門関に杯交わす
 6月 菜の花やロマンスカーの持ち上がる
 7月 北を往く植田を過ぎて青田へと
 8月 わさび田に北アルプスの風涼し
 9月 孫あゆむ満月がゆく夏の湖(うみ)
10月 入れ墨の消えて久しく秋祭り
11月 遺言の献体かなし菊の花
12月 りんご剥く母ありし日を懐かしむ


平成25年 掲載 自選句

 1月 ボロ市や雑踏の中に紛れたし
 2月 鱈買って引きずって行く雪の上
 3月 立雛の一刀彫りの潔し
 4月 それぞれにクレヨンの色クロッカス
 5月 ふるさとに耳聡くなるさくら時
 6月 クレマチス水に浮かべて江戸切子
 7月 沖縄やのんびり渡る水牛車
 8月 秋田駒小雨にけむるお花畑
 9月 十粒のひまわりに庭乗っ取られ
10月 かなかなや空き地となりし父母の家
11月 王宮やドナウの月を真向かいに
12月 はらはらと判官びいき秋球宴


平成26年 掲載 自選句

 1月 一号車一番席の孫の春
 2月 鉈漬を味わいながら蕎麦啜る
 3月 母子築くかまくらに入りご満悦
 4月 ふるさとの遅きさくらに会いに行く
 5月 藤の房一日一日の長さかな
 6月 蟇児は怪獣に後ずさり
 7月 ツアー客仁手古サイダー一気呑み
 8月 静寂やサバンナの月反り返る
 9月 カラヤンの「運命」を聴く敗戦日
10月 山裾を白銀にしてすすき原
11月 雲奔る最上の川面秋来たる
12月 ゲレンデに興奮残し駒子の湯


●上記のそれぞれの句をクリックすると、作家のコメントを読むことが出来ます。


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