神代桜 (写真−実相寺様提供)

〈4月〉

父母と神代桜杖をつき
俳句のコメント

 「父母と神代桜杖をつき」

 妻の父と母が存命の頃、山梨の神代桜を見てみたいと言われたので車で案内した。途中、山梨の名物料理「ほうとう」の昼食をゆっくり取り、実相寺に向かった。

 神代桜は、山梨県北杜市の日蓮宗・実相寺の境内にあり、日本三大桜のひとつと言われ国指定の天然記念物になっている。日本武尊が東夷征定の折りに植えたと伝えられている古木である。

 美しさはもとより、枝を広く伸ばし堂々としており、長い間生きてきた生命力と気品も感じられた。広がった枝は多くの添え木で支えられていた。

 両親は自らが杖をつきながらも、満足げにしばし幾星霜閲したこの神代桜を眺めていた。
 この旅行の後、間もなく母は他界し、数年後に父も後を追い、この旅行が両親との最後の遠出の旅となった。

 桜の開花の時期を迎えると、私の母と何度も行った身延山久遠寺の想い出と北杜市の実相寺が思いだされるのである。

 掲載の写真「神代桜」は実相寺様のご好意によるものです。






(平成19年撮影 土屋 博)