土屋 祥三氏 撮影

平成26年〈2月〉

鉈漬を味わいながら蕎麦啜る
俳句のコメント

 「鉈漬(なたづけ)を味わいながら蕎麦啜る」

 鉈漬はなつかしい味である。大根を大胆に切って漬けたもので、柔らかく噛むとほのかに甘く、少しピリッとした味は蕎麦と一緒にとると心休まる一時である。

 冬になるといつも鉈漬を思い出す。戦後の生活が苦しい時代には生活の中に漬け物があった。毎食やお茶の時間にも沢庵、からし菜、鉈漬けが欠かせなかった。

 冬が近づくと、母は四斗樽に大根を仕込み、長く寒い冬の暮らしに備えて漬けていた。鉈漬けは字の示すように鉈で大根をザックリと乱切りにして漬けたもので、沢庵漬けやからし菜の硬く塩のきいた味と違って、浸かると柔らかく麹の発酵する甘さに加え、ザクザクとした食感が懐かしい。

 1月23日から東京渋谷のデパートで秋田の物産展があると聞いて早速売り場に行ってみた。お目当ての鉈漬はなかったが、いぶりがっこ(沢庵漬)、きりたんぽなど古里・秋田の冬の名産品が沢山並んでいて、しばらく懐かし時間を過ごした。