(伊豆にて  土屋 博氏 撮影)

〈4月〉

命ありてとりわけ花の美しき
俳句のコメント

 「命ありてとりわけ花の美しき」

 70歳に近づいてもまだ体には自信があった。用心のため人間ドックを毎年受けている。
 私は毎年、冬のスキーを楽しみにしていた。その年もスキーに行く準備をしていたら、突然に病院の医師からドックの結果、再検査の必要があると言われた。結局入院となり、腎臓の摘出手術を受けることになってしまった。

 この宣告を受けた時は割合、冷静でいられたと思うが、それでも最悪のことが頭をよぎる時があった。

 無事に退院でき自宅に戻ったとき、今まで気付かなかった身の回りの世界、直ぐ傍の、むしろ自宅の庭の花を見て、安堵の気持ちホットした気持ちになり、静かに息づく命の尊さ、殊に花の美しさが私の心を打ち、目にしみてこの句ができた。

 幸い、手術から6年を経て、お陰様で平穏な日を過ごしている。



庭に咲くサンシュユ セイヨウサンザシ


(撮影 土屋 博氏)