御遺文

〔松葉が谷法難〕

本尊問答抄 1582 仏法の邪正乱れしかば、王法も漸く尽きぬ。結句は此国、他国にやぶられて、亡国となるべきなり。この事、日蓮独り勘え知れるゆえに、仏法のため、王法のため、諸経の要文を集めて、一巻の書を造る。よって、故最明寺入道殿に奉つる。立正安国論と名づけき。その書にくわしく申したれども愚人は知り難し。
立正安国論 209 旅客来りて嘆きて曰く、近年より近日に至るまで天変・地夭・飢饉・疫癘、遍く天下に満ち広く地上に迸る。牛馬巷に斃れ骸骨路に充てり。死を招くの輩、すでに大半に超え、これを悲しまざるの族、あえて一人も無し。(中略)これ何なる禍により、これ何なる誤りに由るや。主人の曰く、独りこの事を愁えて胸臆に憤ぴす。客来たりて共に嘆く。しばしば談話を致さん。
220 客則ち和らぎて曰く、(中略)天下泰平国土安穏は君臣の楽うところ土民の思う所なり。夫れ国は法に依りて昌え、法は人に因りて貴し。国亡び人滅せば仏を誰か崇むべき、法を誰か信ずべきや。先ず国家を祈りて須らく仏法を立つべし。もし災いを消し難を止むるの術あらば聞かんと欲す。主人の曰く、余はこれ頑愚にして敢えて賢を存せず、ただ経文に就きて聊か所存を述べん。そもそも治術の旨、内外の間にその文幾多ぞや。つぶさに挙ぐべきこと難し。但し仏道に入りてしばしば愚案を廻らすに、謗法の人を禁じて正道の侶を重んぜば、国中安穏にして天下泰平ならん。
破良観等御書 1286 きりもの(権臣)ども寄り合いて、まちうど(町人)等をかたらいて、数萬人の者をもんて、夜中におしよせ、失わんと、せしほどに、十羅刹の御計らい、にてやありけん、日蓮その難を脱れしかば、



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