新型コロナウイルスに関する声明文
〜命を護ることは、心を護り、強く生きる力を得ること〜

日蓮宗宗務総長 中 川  法 政
合掌

 今般の新型コロナウイルス感染症によってお亡くなりになられた方々、並びにご遺族の皆様には謹んで哀悼の意を表し、心よりお悔やみ申し上げます。
 また、罹患され、闘病の中におられる皆様には心よりお見舞い申し上げます。さらには、感染のリスクがある中、懸命に治療及び介護にご尽力されている医療従事者の方々に深い敬意と感謝を申し上げます。

 このコロナ禍は、私たち人類に課せられた試練です。国や人種といった境界を越え、今こそ一丸となる時です。私たちは一人ひとり異なる存在ではありますが、心を同じくすることで必ずやこの難局を乗り越えることができます。

 しかし、このような環境下に於いては不安や恐怖が人の心に忍び寄り、社会秩序の崩壊、感染者に対する差別や利己的な行動といった「不和」を引き起こします。この「不和」は、あらゆる争いの元凶であり、最も忌むべきものです。出口のない不安の中、新型コロナウイルスに関する報道や風評、流言といったさまざまな発信により、不安や恐怖感がさらに大きく拡がっております。これにより、人びとの弱い心が必要以上に恐怖心に煽られ、上記ような「不和」を生み、争いや疑心暗鬼を生じます。これでは、この病が収束しても、人と人との間に生まれた「不和」を回復することは非常に困難です。心が壊れ、相互不信が生じた中で、再生は望めません。

 この病の流行の中で、「命を護る」ということは、心を護り、生活を護るということです。生活とは家族であり、家庭であり、仕事であります。それぞれが自分の生命と同じようにかけがいのないものです。生命さえあれば立ち直れるという人がいますが、自分一人生き残った人に、その言葉は残酷です。
 それぞれにとって、生命に匹敵する大切なものを護る勇気を、我々は伝えなければなりません。そして、自粛や我慢の中に、希望の燈を灯すのです。
 この燈こそ、強い信仰心であり、お題目によるエネルギーなのです。

 皆様が持つ浄い心を以て、他者に思いを寄せ、冷静に適切な行動を心掛けましょう。これが人びとを、延いては社会全体を救う一歩へと繋がります。
私たちが暮らすこの世界は、数多くの繋がりの中で生きる慶びに満ちております。この素晴らしい世界を取り戻すため、異体同心して心を繋ぎ合い、困難を乗り越えて参りましょう。

再拝
2020(令和2)4月17日