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道を求めてゆく人は、心の高ぶりを取り去って教えの光を身に加えなければならない。どんな金銀・財宝の飾りも、徳の飾りには及ばない。 身を健やかにし、一家を栄えさせ、人びとを安らかにするには、まず、心を整えなければならない。心を整えて道を楽しむ思いがあれば、徳はおのずからその身にそなわる。 宝石は地から生まれ、徳は善から現れ、智慧は靜かな清い心から生まれる。広野のように広い迷いの人生を進むには、この智慧の光によって、進むべき道を照らし、徳の飾りによって身をいましめて進まなければならない。 貪りと瞋りと愚かさという三つの毒を捨てよ、と説く仏の教えは、よい教えであり、その教えに従う人は、よい生活と幸福とを得る人である。 人の心は、ともすればその思い求める方へと傾く。貪りを思えば貪りの心が起こる。瞋りを思えば瞋りの心が強くなる。愚かなことを思えば愚かな心が多くなる。 牛を飼う人は、秋のとり入れ時になると、放してある牛を集めて牛小屋に閉じ込める。これは牛が穀物を荒らして抗議を受けたり、また殺されたりすることを防ぐのである。 人もそのように、よくないことから起こる災いを見て、心を閉じ込め、悪い思いを破り捨てなければならない。貪りと瞋りと損なう心を砕いて、貪らず、瞋らず、損なわない心を育てなければならない。 牛を飼う人は、春になって野原の草が芽をふき始めると牛を放す。しかし、その牛の群れの行方を見守り、その居場所に注意を怠らない。 人もまた、これと同じように、自分の心がどのように動いているか、その行方を見守り、行方を見失わないようにしなければならない。 |
仏教聖典〈心を清める〉より |
月の初めには、新たな絵を更新してまいります。 住職 合掌